BLACK MOON, Model Yusei Yamamoto, Shot by Yokna Patofa

Friday 23 November 2007

8月


トラヒコ(自分で自分につけた名前)
19才
一人っ子
家族と、ここ十年の間にそれなりに開発された、ニュータウンぽいとこの、名古屋の近くに住んでる
二階に自分の部屋がある一戸建ての家
友だちがいなくてドラえもんが(四次元ポケットではなく)友だち関係目当てで欲しい、ほんとの存在が欲しいと思っている。誰にも愛されていない
中学時代、無口だったが、勉強のおかげで存在価値が辛うじてある感じがした
高校時代、その勉強にもついていけなくなる
愛知万博に一人で行って、何のパビリオンにも入らないで帰る
高校に行くふりをしていたが、行かずに昼間うろうろしていた(それが好きだったが、下校時間は凄く嫌い)。
教師に、親に連絡されないように、先生の携帯電話を盗み、学校の電話線をすべて切ろうと本気で計画するが、できないうちに家へ連絡が行き、怒られる
その後も学校へは行かず、うろうろするが、慣れているわけではなく、ビクビクしていて、自分が昔より小さくなったと感じ、親と学校を恨む。

しかし受験前になり、受験と割り切って勉強をしだす。
親は喜び、当日も大きな期待を感じてるのがわかるが、試験場まで行ったのに試験を受けず、医務室へ行って
仮病の薬をもらった後、建物から出て、試験をしている生徒達を遠くから見ながら、
現実性を感じ、屋久島へ行こうと考える。しかし適当なバスに乗って近くの川へ行って夕方までぼーっとしたあと、引き返して家へ帰る。ごはんを作って待っていた親にどうだったと聞かれ、正直に言った後、泣かれ、殴られてショックを受ける
どうしてと言われ部屋に帰って自殺しようと思うが出来ない

それ以来、自分が一番不幸な顔をしていれば、裁きを免れるのではないかと思い、
受験の年が終わった後はずっと家の自分の部屋に暗い顔でいる
生んで欲しくなかったと自分では言うが、
生まなければ良かったと言われると激しく傷つき、部屋のものをめちゃくちゃに壊す
その後、帰ってくる父親を恐れて部屋に戻って鍵を閉めるが、もう誰も何も言いに来ない。
自分はいらない人間なんだし、誰か殺せばいいのにと思う。

家族で話し合いが持たれ、少し気持ちを取り戻し、バイトをしようとするが失敗する
帰り道に気持ちが悪くなって吐く

この頃自然(愛知万博/屋久島の流れ)がやはり気になるけど、ほ乳類よりも、魚類の方が愛しいと考え、
高い熱帯魚が欲しくなる
お金が出せないので容器で万引きしようとするがあっけなく捕まり、
店員に親を呼ばないで欲しいと言うが近所なのでバレる 
この時の自分や親を見下す店員の態度がのちのちまで心に残る

戦争や犯罪のことを思い、この世の中では、自分や両親のような弱い人間は、常に被害者だと思い、絶望的になる

8月になり、車の前に飛び出してケガをする。
その車が近所の車だったので、自分の家が、奇異な目で見られていると感じる。
近所との関係を切りたいと思い、
寝ている時に、母親の首をしめ、帰って来た父を、バットで殴って殺す
殺した後、浴室にとりあえず二人を運ぶ
その夜はそこでぼーっとしている
起きると昼で、とてつもなく寂しい感じがし、ぶるぶる震える。リビングへ行ってテレビを見てると、甲子園がやってるので、自分も親に言われた通り、野球をずっとやってればよかったと思う。
すぐに死体の匂いがひどくなってくるので、処理しなきゃと思い、切り刻もうとするが、刻めない。
警察が来るかと思うけど、もう焦燥感はない。
あの時なんで屋久島へ行かなかったんだろうと考える。

両親を再びリビングへ戻し、ドロドロの浴槽に水を入れ、
お風呂に入る
自分の体を切る
痛いが、あちこちをある限りの力を込めて切る 水は真っ赤になり、
自分をどうにかして切り刻もうと思うが切り刻めず、
真っ赤な浴槽の栓を抜いて水を流せば、自分もどこかに流れるかと思うけど流れず、
空っぽの浴槽に自分だけが残り、
蝉の音が聞こえ、誰もいないことが凄まじく寂しい